2015年3月23日月曜日

イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密 The Imitation Game

第87回アカデミー賞脚色賞受賞。第2次世界大戦時、ドイツ軍が世界に誇った暗号機エニグマによる暗号の解読に成功し、連合国軍に勝機をもたらしたイギリスの数学者アラン・チューリングの人生を描く。3/13~日本公開中。



The Imitation Game(2014)
監督:モルテン・ティルドゥム
出演:ベネディクト・カンバーバッチ、キーラ・ナイトレイ、マシュー・グード、マーク・ストロング
 

あらすじ



第二次世界大戦中の1939年。アラン・チューリング(ベネディクト・カンバーバッチ)ら6人の精鋭たちが英国政府のために、独軍の暗号エニグマの解読に挑むことになります。しかし変わり者のチューリングは一人で仕事をしたいと訴えたり、他の面々が地道に暗号解読に取り組むのを尻目に分析のためのマシンを作り始めます。



マシンの製作費を却下されたチューリングは、チャーチル首相に手紙で直訴して責任者に任命されます。そして二人の同僚を無能だと理由でクビにしてしまいます。チューリングはその性格ゆえに子供の頃から孤立してきたのですが、ここでも仲間たちから蔑ろにされることになります。



1940年になっても解読は一向に進みません。そんな中、目的を伏せた試験でチューリングよりも早くクロスワードパズルを解くことができたジョーン・クラーク(キーラ・ナイトレイ)が仲間に加わります。女性だと言う理由で低く見られることが多かった彼女ですが、合理的なチューリングはそんな事は気にせず、二人は仲を深めていきます。彼女は孤立するチューリングに上手くアドバイスし、徐々に他の仲間とも打ち解けられるようになってきます。やがて彼らは暗号の解読に成功します。しかしそんな中でチューリングのある秘密とソ連のスパイ疑惑などが重なりだし・・・。

 
感想
 
劇中である人物がチューリングに「君は異質だ。だが時としてそういう人が偉大なことを成し遂げる」というようなことを言う印象的なシーンがあるのですが、まさにそういう映画でした。このセリフは何度かフィーチャーされますが、この使い方も上手いです。

オスカーで脚色賞を取った時に、受賞したグレアム・ムーアがしたスピーチが素晴らしかったのですが、その内容にも少し通じるかもしれません。

「私は16歳の時、自殺未遂をしました。自分は変わった人間だと、自分の居場所が無いような気がしたからです。でも、今ここに立っています。この映画を、そういう子供たちに捧げたい。自分は変わり者で居場所がないと感じている若者たちへ。君には居場所があります。そのままで大丈夫。(Stay weird. Stay different.)そして、いつか輝く時が来ます。」

主人公はとても頭が良く合理的なのですが、それゆえにコミュニケーションが上手くとれず周りと馴染めません。仲間たちに邪険に思われているときに彼の顔のカットが入るのですが、この表情がなんとも絶妙で。カンバーバッチ上手いなあと思いました。

一方でジョーン・クラークも有能な人材ながら女性という理由で正当に評価されていなかったりして。この孤独な二人が心を通じ合わせていく展開はグッと来ます。ただ、キーラ・ナイトレイはちょっと合っていないような。

あと、暗号解読に挑むチームモノとしても面白いです。仲間たちがチューリングのことを認めるようになるところとか。

この映画がいいのは、ちゃんと一人の人物を描いているところだと思います。チューリングが何を成し遂げたか、だけじゃなくて、彼の内面まで掘り下げているところ。だから彼に興味が持てたし、すごく身近に思えました。