2015年4月26日日曜日

2010年代前半ベストアルバム

普段自分が読んでいるブログの方たちがやっていて面白そうだったので、自分も選んでみました!

1.#willpower/will.i.am

 批評家からは酷評され、あまり売れなかったアルバムですが、個人的には傑作だと思います。今まで一番多く聴いたアルバムかもしれません。「will.i.amはヒップホップを捨てた」というコメントをよく見かけるのですが、本人も言っている通り彼ほどヒップホップや音楽の未来について考えている人はなかなかいないと思います。ヒップホップ的なループミュージックの考え方をエレクトロに持ち込んで、少ない音数(でも音圧は凄く大きい)でシンプルなトラックを作り上げています。キャッチーで飽きが来ないメロディーセンスも流石。曲と曲の間が微妙に繋がっていたり、アルバム的な曲作りをしているのも好きな理由の一つです。彼に関しては、音楽以外にも3Dプリンターやスマートウォッチをプロデュースしたりして常にテクノロジーに目を光らせているところも尊敬してます。

2.Ghost Stories/Coldplay

 去年のベストに選んだアルバムです。最小限の音数とスローテンポ〜ミドルテンポで進むアルバム全体に広がる静寂の世界。そしてそこから「A Sky Full Of Stars」で一気に解放へと向かう映画的な構造。去年見たLIVEも最高でした。

3.Born To Die/Lana Del Rey
 
 気分が沈んだ時にいつも聴いていたこの『Born To Die』。タイトルが示すように歌われるのはサッドコア。レトロで物悲しいメロディーに現代的なアレンジが加わって独特な世界観が出来上がっています。これでデビューアルバムとは。彼女に関しては作り上げられた偶像、というイメージもありますが、その辺のあざとさも好きですね。ポップ・アイコンとして。

4.The Bones Of The What You Believe/CHVRCHES

 イギリス、グラスゴー出身のシンセポップ・トリオのデビュー・アルバム。80sライクなサウンドにローレンの純粋さと不安定さが同居したボーカルが奏でるノスタルジックなメロディーが光ります。こういう、メインストリームとアンダーグラウンドのバランスが良いアーティストは好きです。

5.Golder/Haley Bonar

 日本はおろか、アメリカでもそんなに知られていない方みたいです。ジュノー・テンプル主演『Little Birds』の予告編を初めて観たときにこのアルバム収録の「Candy Machine Gun」、「Sad Baby」が使われていて、一目惚れならぬ一耳惚れ?しました。ジャケットのイメージのように、聴いていると目の前に広大な草原が広がります。使われている楽器はギターとドラムとピアノくらいでとてもシンプル。でも一曲一曲が個性を持っていて、アルバムとしての完成度がものすごく高いです。

6.1989/Taylor Swift

 THEアメリカン・ポップ。80sを意識したコンセプトでまとめられたキャッチーでノリのよいアルバム。メロディーは懐かしさを感じられるけれど、アレンジは今風なのが成功した理由だと思います。

7.This Is... Icona Pop/Icona Pop

 こちらもキャッチーでダンサブルな名ポップソングが詰まったアルバムです。EDMですが、ギターやピアノの音を効果的に使っているのでしつこさが無いし、北欧独特の切なくてノスタルジックな雰囲気が感じられます。ぴかおさんが「マフスのはてな」で、もうちょっと早かったら『スプリング・ブレーカーズ』に使われていただろう、と書かれていたのですが、まさに!この映画のテーマと一致すると思います。

8.The Five Ghosts/Stars

 Starsは去年出した『No One Is Lost』も素晴らしかったですが、2010年のこちらのアルバムを選びました。「Dead Hearts」、「Fixed」、「Wasted Daylight」の3曲が素晴らし過ぎる。人間が音楽を好きになるのって、「音から入る」のと「歌詞から入る」のとで2パターンあるそうなのですが、これに関しては前者で、その後歌詞を見たりしてより好きになりました。

9.Night Time, My Time/Sky Ferreira

 Sky Ferreiraに関しては「Everything Is Embarrassing」が一番好きなのですが(このアルバムには入ってない)、このアルバムは結構路線が違います。メロディーはどれもキャッチーですが、アレンジがロックテイストでノイジー。ただ彼女にはこの路線の方が合っている気がします。

10.Pink Friday: Roman Reloaded – The Re-Up/Nicki Minaj

 『Pink Friday: Roman Reloaded』のリイシュー盤です。この「The Re-Up」部分の8曲がと特に素晴らしいです。「The Boys」とかかなりヘンテコな曲ですが、遊び心に溢れてます。あとニッキーはやっぱりラップ上手い。


ということで10枚選んでみました。Coldplayやwill.i.am(The Black Eyed Peas)に関しては他のアルバムも凄く好きなのですが、とりあえず1アーティスト1枚にしました。
 

2015年4月23日木曜日

Passion Pit - Where The Sky Hangs [和訳]

先日和訳した「Lifted Up (1985)」に続いて、Passion Pit(パッション・ピット)のニューアルバム『Kindred(キンドレッド)』から「Where The Sky Hangs」を訳してみました。子供の頃に行った遊園地とかで流れていたんじゃないか?って、そんな記憶を刷り込まされそうになるくらい、ノスタルジックで甘いナンバーです。



It goes up, it goes down.
上がったり、下がったり

It goes any way the wind would like to throw it around.
風が吹く方へ進んでいく

I was lost, now I'm found.
迷子になったけれど、見つけてくれた

I put my hands in the air and my knees to the ground.
空に手をかざして、地面にひざまづいたんだ


The pieces of it all that I could only hold in;
僕には全てを理解することが出来なくて

I could never say what you'd want me to say.
何て言って欲しいのか、なんて聞けなかった

I've got somebody else just to keep me on my toes again;
また気が抜けなくなるような人に出会ったんだ

I can barely stand when you come in too close.
君が近くにいると、どうにかなっちゃいそうだ


I get caught up in your heart strings,
君の愛情に夢中なんだ

way up where all of the sky hangs.
空が漂うよりはるか上の場所で

I'll take all that I can get,
手に出来るものは全て手にするから

just don't make me go.
僕を離さないで


Was it here? Was it there?
それはここにあるの?それともあっち?

Was it swirling around us in the atmosphere?
僕らの周りで渦巻いているのかな?

Is it us? Is it them?
それは僕ら?それとも彼ら?

It's the ones plucking the petals until we're left with the stem.
茎だけになるまで花びらをむしりとるんだ


The people push it forward, my body can't afford it.
人々はそれを押しのけて進んでいったけど、僕には出来ないみたい

I stand up and take it but I fall to the side.
立ち上がって掴んでも、脇にそれてしまう

I've got somebody else just to keep me on my toes again;
また気が抜けなくなるような人に出会ったんだ

I can barely stand when you come in too close.
君が近くにいると、どうにかなっちゃいそうだ


I get caught up in your heart strings,
君の愛情に夢中なんだ

way up where all of the sky hangs.
空が漂うよりはるか上の場所で

I'll take all that I can get,
手に出来るものは全て手にするから

just don't make me go.
僕を離さないで


Oh, what's it cost? What's it cost?
どうすればいい?どうすればいいのかな

Hey, the wires crossed.
上手くかみ合わなくて

Yeah, they got crossed and I got lost.
もうどうしたらいいか分からない

Yeah, I got lost. Hey,
迷子になったみたいだ

so what's it costing me to get right back to you?
どうすれば君の元に戻れるのかな?


追記:これまた訳すのが難しくて、友達に聞いたりして直していきました。まず、「The pieces of it all that I could only hold in」と「I could never say what you'd want me to say」のcould。最初過去形?と思ったのですが、強調するためのものと理解しました。(コメントを頂きましてcouldは過去形だと解釈しなおしました。そう考えると、再び気になる人に出会って葛藤している主人公の心情がより分かった気がします。)あと、「I get caught up in your heart strings, way up where all of the sky hangs.」の部分はネットで最初歌詞検索した時二つの文に分かれて載っていたのでよく分からなかったのですが、CDの歌詞カードを見ると、このようにカンマで繋がっていたので考え直しました。なんとなくイメージは理解したつもりですが、日本語にするのが難しい。。。「the wires crossed」の部分は直訳では「混線する」という意味ですが、「誤解が生じる」という意味で日本語にしました。

2015年4月22日水曜日

素数たちの孤独



素数たちの孤独(byパオロ・ジョルダーノ)


あらすじ(「BOOK」データベースより)

スキー中の事故で脚に癒せない傷を負ったアリーチェ。けた外れの数学の才能を持ちながら、孤独の殻に閉じこもるマッティア。この少女と少年の出会いは必然だった。ふたりは理由も分からず惹かれあい、喧嘩をしながら、互いに寄り添いながら大人になった。だが、ささいな誤解がかけがえのない恋を引き裂く―イタリアで二百万部の記録的ベストセラー!同国最高峰の文学賞ストレーガ賞に輝いた、痛切に心に響く恋愛小説。


感想

この本は去年の夏くらいに書店で見かけて、表紙と内容に惹かれてなんとなく買ってからそのまま放置していたのですが、ふと思い出して一昨日から昨日にかけて一気に読んでみました。

いやー、これは面白い!久々にビビッと来ました。

結構痛くて切ない物語なんですが、主人公たちの心理描写がしっかりしているので感情移入して読めました。

特に高校時代。アリーチェはクラスのイケてる女子たちと比べて自己嫌悪に陥る。密かに憧れているヴィオラと同じようなタトゥーをお腹に入れてみたり。その後ヴィオラに裏切られたことを知ると絶望し必死にタトゥーを消そうとする。
マッティアは周りの人間と関わろうとしない。勉強だけは一人ですることが出来るからその殻に閉じこもる。

タトゥーを消そうとするアリーチェにマッティアがかけた言葉が素敵です。思春期の傷を肉体の傷になぞらえている文章がありますが、これもいいですね。

「やがて、時とともに、思春期の傷は癒されていった。傷口は感じ取れぬほどゆっくりと、しかし着実に閉じていった。傷口のかさぶたはひっかかれるとはがれたが、そのたびに、もっと黒くて厚みを増したものが頑固に復活した。そして最後には、すべすべの柔らかな新しい皮膚が欠けていた部分を補った。赤みを帯びた傷跡もやがて白っぽくなり、ついには残りの肌と区別がつかなくなった。」

周りの人物の心理描写も描かれているのも良かったです。ヴィオラにしても自身の苦い初体験が元になってアリーチェを切り捨てる訳で。親たちが年月を重ねるごとに子供に対する接し方に変化が表れるのも、親も一人の人間であることを再認識されられました。この辺はなんとなく『6才のボクが、大人になるまで。』を思い出しました。

孤独な主人公たちを素数、双子素数になぞらえているのもベタですけど好きですね。双子素数というのは「11と13」、「17と19」のように間に一つの偶数を挟んで並ぶ素数のペアのことで、マッティアは彼とアリーチェの関係を双子素数に例えています。どちらも自身と1以外で割り切ることが出来ないひとりぼっち同士であり、お互い近くにはいるけれど、本当に触れ合うにはなお遠過ぎる。

随所に理系的な知識が散りばめられているのは、作者が物理学を学んでいた方だからでしょう。それはマッティアの、世界を論理的に認識する心理描写にも表れていて、この描写がものすごく上手い。自分も一応理系なので共感できる部分も多かったです。こういった、知性を感じられる人が想像力を広げて書く文章というのはそれだけで素晴らしいです。

ちょっとネタバレになりますが、結局二人は結ばれずに終わります。ただアンハッピーな終わり方と言うわけでもなくて、それぞれが自立して自分の道を歩き出すんですね。お互い昔は素数(孤独なもの)同士だった二人ですけど、人間は時と共に変わるものであって、この先どうなのかは分からない訳です。これは希望に満ちた終わりかただと思います。


2015年4月12日日曜日

トランス・トリップ Magic Magic

ジュノー・テンプルがシッチェス映画祭で主演女優賞を受賞した心理スリラー。
 
 

Magic Magic(2013)
監督:セバスチャン・シルバ
出演:ジュノー・テンプル、マイケル・セラ、エミリー・ブラウニング
 

あらすじ



アリシア(ジュノー・テンプル)は従姉妹のサラ(エミリー・ブラウニング)に連れられて南米チリに旅行に出かけます。そこでサラの彼氏や、友人であるブリンク(マイケル・セラ)たちと一緒に過ごすことになります。



しかしサラが用事で一度帰ることになり、アリシアはよく知らないブリンクたちと過ごすことになります。もともと内気で精神的に不安定なところがあったアリシアですが、慣れない環境で不信感が募ることで精神的に錯乱していき・・・。
 
 
感想
 
精神的に不安定になるとのことでアメリカでは劇場公開が見送られたといういわくつきの作品ですが、別にそこまででもないような?まあ、普通に劇場公開しても客は入らなかったと思いますが・・・。かなり地味な作風なので。ただ、個人的には凄く好きな作品でした!

まず人間描写が上手い!アリシアが鏡の前で笑顔の練習をしたり、相手が自分のことを見てるんじゃないかって気になっちゃうところ(視線恐怖症?)とか。あと性的なことに興味がありながらも極端に怖がっている感じ。その描き方が上手いです。

周りの人物の無神経さもリアル。ブリンクがアリシアをだしに使って、片思いしているサラの彼氏にふざけて抱きつこうとするところとか。唯一の理解者に見えたサラもふとした時に「なんで私がこんな目に・・・。」とか言っちゃうし。

動物をフィーチャーしているところも特徴的でしたね。意味なく鳥を撃ち殺したり。アリシアに寄ってきた犬が発情しちゃって、それがトラウマになっちゃうのとか。まあ大したことじゃないんだけど、結構共感できました。

一般ウケは難しそうですが、心理学に興味がある人にはオススメです。



2015年4月2日木曜日

Passion Pit - Lifted Up (1985) [和訳]

Passion Pitの新作アルバムからの先行シングル「Lifted Up (1985)」が素晴らしいので和訳してみました。初めてなので変なところもあるかと思います。。(4/4和訳の内容を一部訂正しました。)
この曲はボーカルのマイケル・アンジェラコスが自身の双極性障害を乗り越えて結婚した妻へのラブレターだとのことです。



 
Tell me what does it take to make good now
教えてくれよ、どうすれば良くなるのか

How many years do you wait?
何年くらい待っているのだろう

Oh, and now all of the clouds are combining
雲が集まってきて、

The flickering light's just a flame
揺らぐ光はちっぽけな明かりでしかない

Oh but yeah, I'm so tired
ああ、もう疲れたよ
 
I've been away for so many years
長い間遠くに行っていた

But I guess I'll just wait a bit longer
でももう少し待とうと思うんだ
 
I'll stay 'til they open the gates
その門が開けるまで

Oh but yeah, all my life I stay here waiting
ああ、でも僕の人生は待ってばかりだ
 
Every new year, always making me
新しい年が明けるたびに

Feel as though there's nothing up there but
何もないんじゃないかって感じるよ、でも

One day you came out of nowhere
ある日君が現れたんだ
 

1985 Was a good year
1985年は最高の年だったんだ

The sky broke apart and you appeared
空が開けて君が現れた

Dropped from the heavens, they call me a dreamer
天から落ちるだなんて、空想家みたいだって言われるよ

I won't lie, I knew you would belong here
誓うよ、僕と君は一緒になるって分かってた

Lifted off the ground
地面を飛び立って

I took your hands and pulled you down
君の手を取って引き下ろしたんだ

Because 1985 was a good year
だって1985年は最高の年だったから

I won't lie, I knew you would belong here
誓うよ、僕と君は一緒になるって分かってた


Oh well, how many years has it been now?
何年くらい経った?
 
How many days went to waste?
何日くらい無駄にした?

Now the rain and the thunder are clashing
雨と雷がひしめき合って

The Sun's got a smile 'cross the face
太陽は笑顔を手にしたよ

Oh, but yeah I'm so tired
ああ、もう疲れたよ

I fight so hard and come back beaten
酷い戦いに挑んだけれど、打ち負かされて帰ってきた
 
Beacon, burn through it brightly
光よ、その道を照らし出してくれ
 
It soared through a sliver of space
宙を切って舞い上がる

Oh but yeah, all my life I stay here waiting
ああ、でも僕の人生は待ってばかりだ

Every new year, always making me
新しい年が明けるたびに

Feel as though there's nothing up there but
何もないんじゃないかって感じるよ、でも

One day you came out of nowhere
ある日君が現れたんだ


1985 Was a good year
1985年は最高の年だったんだ

The sky broke apart and you appeared
空が開けて君が現れた

Dropped from the heavens, they call me a dreamer
天から落ちるだなんて、空想家みたいだって言われるよ

I won't lie, I knew you would belong here
誓うよ、僕と君は一緒になるって分かってた

Lifted off the ground
地面を飛び立って

I took your hands and pulled you down
君の手を取って引き下ろしたんだ

Because 1985 was a good year
だって1985年は最高の年だったから

I won't lie, I knew you would belong here
誓うよ、僕と君は一緒になるって分かってた

Lifted up
飛び立つよ

Lift us back to the sky and the world above
空と天上の世界に引き上げて

Lifted up
飛び立つよ

Lifted up
飛び立つよ


1985 Was a good year
1985年は最高の年だったんだ
 
The sky broke apart and you appeared
空が開けて君が現れた

Dropped from the heavens, they call me a dreamer
天から落ちるだなんて、空想家みたいだって言われるよ

I won't lie, I knew you would belong here
誓うよ、僕と君は一緒になるって分かってた

Lifted off the ground
地面を飛び立って

I took your hands and pulled you down
君の手を取って引き下ろしたんだ

Because 1985 was a good year
だって1985年は最高の年だったから

I won't lie, I knew you would belong here
誓うよ、僕と君は一緒になるって分かってた


追記:最初に訳した時は時制が曖昧で今主人公がどういう状態なのかよく分からなかったのですが、友達と話し合ってある程度理解しました。主題としては、彼が病気と戦っていた時の事を語っていて、「One day you came out of nowhere(彼女が現れた)」ことで救われたということを示しているのだと思います。「1985 Was a good year」から始まるサビ部分は最初今のことを語っているのかと思っていたのですが、全て過去形で語られているので考え直しました。多分彼は彼女と出会ったことを運命的なものだと感じていて、彼女が生まれた1985年に彼が天へと飛び立って彼女を地上に引き下ろしたんだと考えているのだと思います。訳してみる前から素晴らしい曲だとは思っていたのですが、こうして歌詞の意味を考えていくとロマンチックで本当に美しくてより好きになりました。また気になる曲が出てきたら訳してみようと思います。